仙骨ってどこ?腰の土台を支える筋肉たちと動きの関係を知ろう
こんにちは、三華堂の早川です。
「腰が痛いんです」と来院される方に、身体の状態を見ながら「仙骨(せんこつ)」という骨をお伝えすることがあります。
でも実際、「仙骨ってどこにあるんですか?」「それって骨盤なんですか?」と聞かれることも多いです。
仙骨は、日常生活ではあまり意識されることのない“体の中心部の骨”。
けれど、立つ・歩く・座るといった毎日のあらゆる動きに関わってくる、まさに「腰の土台」といえる存在なんです。
今回はそんな仙骨と、その周辺にある重要な筋肉たちにスポットを当てて、体の動かし方・姿勢・不調との関係をやさしく解説していきます。
【目次】
1. 仙骨ってどこ?どんな骨?
2. 仙骨を支える主な筋肉たち
3. 体の動きと仙骨の連動性|立つ・歩く・座るにどう関係?
4. 仙骨が固くなると、体はどうなる?よくある不調の例
5. 鍼灸でできるアプローチ|仙骨周辺の深層筋に働きかける
第1章|仙骨ってどこ?どんな骨?
仙骨とは、骨盤の中心、背骨の一番下にある逆三角形の骨のことです。
ちょうど腰のくびれのすぐ下あたり、お尻の上の少し平らな部分を触ってみると、なんとなく「硬い面」が感じられる場所、そこが仙骨です。
骨盤は、左右の腸骨(ちょうこつ)と真ん中の仙骨、そして尾骨(びこつ)で構成されています。
この仙骨が背骨の重みを骨盤へと伝える“橋渡し”の役割をしており、まさに“体の中心”を支える要(かなめ)です。
第2章|仙骨を支える主な筋肉たち
仙骨は単体で存在しているわけではなく、周囲の筋肉に支えられて安定しています。
では、どんな筋肉たちが仙骨を取り囲んでいるのでしょうか?主に以下のような筋肉が関与しています:
🧩 腸腰筋(ちょうようきん)
背骨の前側から骨盤、太ももの付け根までをつなぐインナーマッスル
骨盤の前傾・後傾に大きく関与し、立った姿勢を保つのに重要

身体の前から見た腸腰筋のイラスト
🧩 大臀筋(だいでんきん)
お尻の大きな筋肉。仙骨の裏側にも付着
骨盤を安定させ、立つ・歩く・階段を上るときに重要

大殿筋
🧩 中臀筋(ちゅうでんきん)
- お尻の外側に位置し、仙骨と腸骨の安定に関与
- 歩行時や片脚立ちのバランス維持に欠かせない筋肉で、骨盤の左右バランスに重要

大殿筋を外して中殿筋を分かりやすく見せています
🧩 梨状筋(りじょうきん)
仙骨から太ももの骨(大腿骨)につながる筋肉
坐骨神経と隣接しており、硬くなると「お尻から脚のしびれ」につながることも

中殿筋を外して梨状筋を見えやすくしています
🧩 多裂筋(たれつきん)
背骨の1つひとつをつなぐように並ぶ細かい筋肉
仙骨の真上から腰椎へと連なり、背骨と骨盤の安定に深く関与
こうした筋肉が仙骨を取り囲むように付着し、日々の動き・姿勢・体重の移動を支えています。
もしこれらの筋肉が疲れて固まったり、左右差が出ていたりすると、仙骨まわりにアンバランスが生まれ、それが腰痛や姿勢の崩れにつながることもあるのです。
第3章|体の動きと仙骨の連動性|立つ・歩く・座るにどう関係?
私たちの身体は、骨盤を中心に上半身(背骨)と下半身(脚)を連動させる構造になっています。
その接続部がまさに「仙骨」なのです。
たとえば――
立っているとき、骨盤が少し前に傾いているか?後ろに傾いているか?
→ 仙骨の角度によって、腰への負担がまったく変わってきます。座っているときに猫背になると、仙骨が後ろに倒れてしまい、腰の筋肉が引っ張られます。
歩くとき、脚を前に出す動作にも、仙骨が微妙に回旋してリズムを調整しています。
つまり、仙骨は単なる“骨”ではなく、動作の中で微妙に動きながら姿勢バランスを調整している重要なハブのような存在なのです。
仙骨の動きが悪くなると、背骨や股関節の動きもかたくなり、体全体がぎこちなくなったり、局所的に負担がかかるようになります。
ここまでで「仙骨の重要さ」「筋肉との連携」「体の動きとの関係」がなんとなく見えてきたかと思います。
次章では、この仙骨まわりが**固くなったときに何が起きるか?どんな不調につながるのか?**をさらに掘り下げてみましょう。
第4章|仙骨が固くなると、体はどうなる?よくある不調の例
仙骨のまわりが硬くなることで、私たちの体にはさまざまな不調が現れます。単なる筋肉のコリや張りにとどまらず、体の深い部分の動きや神経系にも影響を及ぼすのがこのエリアの特徴です。
たとえば以下のような症状がよく見られます:
腰の奥がズーンと重だるい
お尻の奥の筋肉が固まっていて、座っているのがつらい
立ち上がるときに腰や背中がピキッと痛む
長時間立っていると腰が抜けそうになる
背中全体が丸まりやすく、姿勢が崩れやすい
骨盤の傾きが強く、歩き方がおかしくなる
こうした症状が長引くと、代償動作によって他の部位――たとえば肩、首、膝などに痛みが波及することもあります。
仙骨まわりは体の中心であり、あらゆる動作に関係しています。だからこそ、この部分が固くなることは、全身の「バランスを失う引き金」にもなり得るのです。
第5章|鍼灸でできるアプローチ|仙骨周辺の深層筋に働きかける
仙骨まわりの筋肉が硬くなり、体のバランスが崩れていると感じたとき、鍼灸は非常に有効なアプローチとなります。
特に、中殿筋・多裂筋・梨状筋・大臀筋などの深層筋は、マッサージなどの手技ではアプローチしづらい部位ですが、鍼を使えば筋肉の奥深くにまで直接刺激を届けることができます。
鍼灸施術では、次のような部位に焦点を当てて治療を行います:
仙骨付近の局所施術
→ 多裂筋や梨状筋など、骨盤を支える深層の筋肉に対して直接刺激を加え、緊張をゆるめます。骨盤の動きと連動する筋肉(腸腰筋・腹部・腰部)への施術
→ 骨盤と連動して働く筋肉にも刺激を加えることで、仙骨の動きをスムーズに保ちます。自律神経を整えるツボへのアプローチ
→ 仙骨まわりの筋肉は、緊張やストレス、自律神経の乱れとも深く関係しています。背部・腹部・下肢のツボを使い、身体全体のバランスを整えるよう施術を行います。
また、鍼灸では「痛みのある場所だけでなく、その原因となっている全身のつながりを診る」ことができます。たとえば、腰や仙骨が原因の肩こりや首のこわばりに対しても、仙骨からの調整によって結果的に上半身の状態が改善するというケースも多くあります。
仙骨は、まさに身体の“芯”を支える土台です。
だからこそ、日々の立ち方・歩き方・座り方、さらには呼吸や内臓の働きにまで影響を与えます。
「最近、腰の奥が重い」「体幹が不安定な感じがする」――
そんな方は、ぜひ一度“仙骨”のコンディションを意識してみてください。
仙骨を整えることが、身体全体の調和を取り戻す第一歩になるかもしれません。